仕組債は「貯蓄から投資へ」を阻害している?

地方銀行を中心とする金融機関は、他社株転換債(EB債)と呼ばれる仕組債で販売を伸ばしてきました。この仕組債は、コストの開示が不十分で、金融庁が業務改善命令を出した武蔵野銀行と千葉銀行では、組成会社(商品を開発した会社)や販売会社があらかじめ、8%~10%の手数料を抜き、その後の利回りをお客様に提示していました。本来の利回りが15%であれば、お客様に示される利回りは5%程度です。お客様には、抜かれる手数料がどれくらいか見えません。販売サイドの金融機関の立場に立ってみると、低金利下で本来業務の融資で収益が稼げない中、ひじょうに手数料の高い仕組債を販売することは、絶好の収益源と考えても不思議ではありません。仕組債は、スワップ、オプションなどのデリバティブ商品を活用して高いリターンを狙う金融商品であることから、金利や株価などの市場変動により、想定以上の損失を被るリスクがあります。また、一般的な債券と比較して市場の流動性が低く、売却時に十分な価格がつかないリスクもあります。金融庁によると、最近では、EB債の個人向け販売を全面停止、もしくは、富裕層以外の先への販売を停止する金融機関が相次いでいます。「貯蓄から投資へ」は、投資家がリスクとリターンが見合っているかを、わかりやすく判断できる情報を売り手の金融機関が開示することが大前提です。EB債のような金融機関のもうけを優先した商品を販売することは、国民の「貯蓄から投資へ」を阻害することになるのではないでしょうか。