年金への不安

先日、60代前半の女性から、「年金は、破綻する不安があるので、繰上げでもらった方がよいか。」と相談を受けました。わたしは、年金に対する誤解を説明して、年金は破綻しないことを理解していただき安心してもらいました。その内容は、以下のとおりです。

年金は、自分が積み立てたお金を将来もらうものではなく、現役世代の人が生み出したお金を高齢世代の人が受け取る「社会的な仕送り」です。現役の人が働いて納める保険料で、高齢者の年金が賄われているのです。現役で働いている人がいる限り、仕送りがなくなることはありません。そして、少し難しい言葉になりますが、マクロ経済スライド制により、年金支給額は現役世代の保険料収入の範囲内で抑えられる制度になっているので、年金は破綻しない仕組みになっています。これに対して、「少子高齢化で仕送りする人が少なくなるのではないか」という反論があるかもしれません。確かに、少子高齢化は急速に進行しています。1970年には、若者13人に対して高齢者1人でしたが、2020年には若者2.6人に対して高齢者1人、2040年には1.8人に対して高齢者1人になると予測されています。このデータだけを見ると、「やっぱり年金は破綻するのではないか」と思うのは当然かもしれません。しかし、「年金の真実」を見るには、65歳未満の若者と65歳以上の高齢者の数ではなく、「働いている人」と「働いていない人」、つまり「仕送りする人」と「仕送りされる人」で考える必要があります。1970年には1人の働いている人が1.05人の働いていない人を支えていました。一方、2020年には1人の働いている人が支えているのは0.89人で、むしろ改善しています。少子高齢化がピークを迎える2040年でも0.96人なので、1970年よりは改善しています。信じられないかもしれませんが、その理由を説明します。1970年は定年が55歳で、専業主婦世帯が主流でした。現在は、再雇用を含め65歳まで働いている人が男性では80%を超えており、55歳から65歳までの人が多く働いています。また、1980年と比較すると、専業主婦世帯は半減し、共働き世帯は倍以上になっています。このことは、働く人が増え仕送りする人が増えたことを示しています。単に年齢で区切って少子高齢化と言ってもあまり意味がないことがお分かりいただけたと思います。したがって、少子高齢化が進むからといって、「年金制度は崩壊する」というわけではないのです。